失われた空白

「でも————」という文句から会話の糸口を創り出す技術が、身近に蔓延っている。

誰もが知る通り、「でも」という言葉は逆接の意味を有すのであり、本来は前文に対して、文章を展開するために用いる。

しかし、「でも」「いや」という枕詞からでないと、話を始めることが難しい人は多いのだ。それが間違っているとは思わない。むしろ、相手の興味を惹きつけ、いきなり本題に入ることに伴う抵抗感や、会話の成立までの橋渡しとして、有用であろう。問題になるとすれば、そんな風に気を遣わないと会話を始めることが難しい関係性と文化の方だ。

前文がないのではなくて、気の置けない空気が、そこにないのだろう。