2018-01-01から1年間の記事一覧

刹那が廻る

一年の終わりと一年の始まりは同じ、というのはトリックです。 そんな筈はなくて、時間の矢は放たれたまま。 ただし、一瞬の出来事が複数個連続する関係において、内挿をとる手法は認められているわけで、矢の軌道経過は、都合よく解釈した方が気持ちが楽で…

躍動の残骸

雪が積もっている。 マンションよりもタワービルよりも高くからきらきらと光を反射させて落ちてきたそれが、同じように落ちてきた残滓たちにくっついて、それが無数に結束して、白い厚みになって、でもそれは排ガスに塗れて、あるいは踏みつけられて、薄黒く…

宝籤売り場しかない

損得勘定を始めると何もできなくなって、かえって非効率です。 一歩家を出れば、無限の選択肢に迫られて、足の踏み出し方一つとっても、最大効率を達成できる歩き方、ルート、服装を選ばなくてはなりません。 人との会話なんて、その最たるものです。シミレ…

終らない伝言ゲーム

恣意性のない情報なんてありません。 データは抽出方法や母集団の選定で変わります。グラフだって色彩や形で巧みにデータを変形させます。そも、情報を取得しようとする我々が恣意的な生物なのだからどうしようもない。 人づてに聞いた話なんて、最早フィク…

建前の後

本音と建前。 建前という共通言語が存在するお陰で、立場が異なる人たちの意思疎通が表面上は成立します。これを低次元で行っているのが敬語とか業界用語だと思います。意味的に形式化された表現というのは、結構貴重です。倫理観とかは建前に近いですね。 …

ゴーイングコンサーン

一人住まいを考えると、賃貸か購入か、という二択に悩む場面があります。 多くの場合、~年以上住むなら購入したほうがお得だ、という推論が導かれて、一見問題が解けたように錯覚しますが、実はもう一つ、与式には条件が必要であって、そのことに気がついて…

欠乏のしっぽ切り

衣食足りて礼節を知る、なんて当たり前。 マズローの五段階欲求。衣食住が確保され、安全が確保され、好ましい組織に所属、もしくは関係し————さらに諸条件が整えば社会的に貢献もするし、自己実現にも努めるそうです。 確からしい理論ですが、甘えるな、と…

嫌味成分が含まれています

○○を忘れるのは、○○を大事に思っていない証拠ではないか。 こんな疑問形に粉飾した叱責、耳にしたことないですか。 仕手が結論ありきで問いかける行為は、嫌味成分の含まれている場合が多い。 上述の質問に対し、事実に即して「はい、○○を大事に思っていない…

夢の前

夜は想像意欲の涌く神秘の時間。 それが危険なほどの域に達するのが、睡眠間近。現を抜け、理想の幻影を目前にして空想することは、あまりにも純粋な欲求。大事な決断は夜しないほうがいい。貴方が明日戻らなくてはいけない世界は、純粋さとは対極をなす、複…

幸せの伝播

幸福って言葉を濫用すると胡散臭くなるのはなぜでしょうか。 それはさておき、他人の幸を見て不幸になる人は少ないのではないかと思います。そこには、幸せな人で囲まれた環境に身を置くことが幸せに繋がるのでは、という確度の弱い期待と、幸せな人は、きっ…

心地よいノイズ

世界は音に満たされている。 トラック、空調、隙間風、警報、鳴き声、会話。どこまでが環境音として許容されるでしょうか。害獣とペットはどう違いますか。ユーモアと駄洒落の境界はどこですか。 贅沢を容易に得る方法は、感性を曲げることです。好悪の軸を…

センチメンタルの帰る先

冬の夜。 感傷的な気分は、痒みに似て、致命傷ではない心残りを刻む。 感情に限界はないが、傷には限度がある。 その蓄積は、何をもたらすのか。 人には帰属意識がある。動物には帰巣本能がある。みな、潜在的に帰る場所を求めている。感傷はそれを強く想起…

大量の孤人

個人情報の取扱いがかなり五月蠅い昨今です。 書類や確認作業が増えるのと比例して、人は確立されていきます。一度個人として切り出された有象無象は、再びくっつけようとしてもなかなか溶け込まず、現代は1人がたくさん存在するだけの集落と化しています。 …

衝突する善意たち

人は基本善人です。 綺麗事? 綺麗なことが好きなのは当然でしょう。 世迷言? 迷うも何も目的地が見えないでしょう。 冗談はさておき、人は自分が善いと思ったことを優先的に実行するものです。だって悪いと思いながら実行するのはかえってストレスフルです…

週末死相

労働は麻薬のようです。 みんな働きたくて仕方ないから就職活動を頑張ります。そしてめでたく労働者階級へ。 仕事が残ると意地でも終わらせたくてサービス残業だってする。仕事大好きですからね。しかし週末、冷静になり、こんなことやりたくない、と思い、…

セレンディピティの招きにあひて

月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也————。 人は常に時間を旅する浪人です。時空の矢は止まることなく、我々は無数の選択を繰り返し、旅先を決定しています。前を向いていても、後ろ髪を引かれても、どちらにしても停滞はできないのです。 なお、方…

アスタリスクの亡霊

後書き、注釈、なお書き、補足、参考、注意事項————。 ときに本編よりも意味を持ってしまうことがある。気になると、あとは永久機関のように猜疑心が涌いてきて、迷走しがち。文章に限った話ではなくて、本筋以外のところに意図せず注目が集まり、それが想定…

過去がやってくる

どんな宗教も、地球カレンダー基準では、ほんの数秒前に誕生した新参。 神様が宇宙を創った、と言い出した連中は、一体どの程度の”小宇宙”を想定していたのか、現在観測、提唱される宇宙より、随分小規模なものだったに違いない。 追究するほどに、無限はよ…

白紙の遺言

人は何かを残したい。 死後に遺物を残すことで、生の意味を検証したがる。 地位や名誉や資産や子孫や。特にDNAは便利だ。結局明確な”証”を残せかったとしても、DNAさえ次の世代に繋いでしまえば、問題を先送りされる。 無限に続くモノなんて残しようがないけ…

世界の社畜より

人は生まれながら使役される欲求を持っている。サルトル曰く「自由の刑に処されている」らしく、潜在的に支配者を求めるから、いつの世も、独裁者は迎えられるのだ。 命令に従えば考えなくていい、という低次の理屈に重ねて、自分の哲学が未完成だが何かに向…

眠れる四肢

心はどこにあるのか。 ある実験では、臓器を移植した人の人格が、術後に大きく変化し、ドナーに似たものになったと言います。脳はメモリであって、心を創る装置ではないのでしょう。 究極的に、人の心は誰にも感じ取られず、心情の結果として起こる行動・反…

捏造されるカタルシスたち

最も簡単に幸せを感じる方法は、人生の期待値を落とすことです。 基準を下げて、相対評価を高くする。 劣悪な環境からの脱出劇。いじめっ子への反撃。悪人への復讐。 カタルシスを得るために悪が創られ、予定調和的に葬られる。素晴らしいマッチポンプがそこ…

閉じた世界の片隅で

皆が、プライベートスペースを勝ち取って、自分という輪郭を守るため、戦っています。万人の万人に対する闘争社会です。 大型トラックに乗っている人の気が大きくなるのは、プライベートスペースが拡大したことで力量を錯覚するからだ、なんて説ももっともら…

オゴラナイココロ

やらない善よりやる偽善。 結果至上主義に根差したパワフルな理論ですよね。 抑々、善悪とは独りよがりの主観的な概念です。混同されやすいのですが、議論の余地を前提とする”正義”とは異なる次元の問題なのです。人の数だけ善悪の可能性があるわけで、とも…

A gentleman will walk

余裕の正体は何でしょう。 まだまだ余力を残しているぞ、という潜在的可能性の予感でしょうか。 所作の落ち着いている様でしょうか。 いずれにしろ、たぶんその正体は空気です。 他人が他人をそう評価した時点で、余裕は生まれます。ゆえに、余裕とは、人間…

経済学は人を殺すか

社会は我々に対し、「A:合理的であること」を求めます。しかし一方で、「B:人間的であること」が善とされる局面が多々存在するのもまた事実です。 一見相反する要求に思われますが、集合論的にはA⊂Bであり、実現可能です。 近代以降「C:理性的であること(≒A…

サスペンスは幸福を彩るか?

安全であることの愉悦。 事故現場に集まる野次馬や、恐怖映像の視聴者は、この快楽を無意識に求めて、俯瞰した立場から安全を確認している。 今日は、Amazonプライムについて書きます。 プライムビデオってすごいですよね。無料の作品群もかなり充実していま…

怯える怒りたち

怒りについて考えてみる。 怒りは危機感に発信される防御反応だ。 直接的に危ない目を見たとき、その相手方に怒る。また、社会的に見て自分の立場が貶められるような場合も、何かに怒りをぶつける。 前者はイメージしやすいと思う。 後者はどうだろう。 例と…

後悔を育てる

自身の奥行を測るため、思考の露出を試みました。 哲学の強度が低いのと、信条に確たる根拠がないため、きっと長く続かない実験になります。 近い未来に見返して、思慮の至らなさに恥や後悔の感情を抱くはずですが、負の感情を育てるのも、人間らしくて面白…